- 漏れている量自体が変化するとは?
- エアリークテストで取り扱う気体漏れの範囲は、ほとんどが粘性流です。図2左のリークモデルのように、管路が細く非常に狭い間隔を通して流体が流れる時、粘性流の範囲内のリークでは、図2の式を適用します。このとき、粘性係数は温度の変化によって変わるため、流量の変動要因となります。また、収縮・膨張の影響によっても漏れ量が変動します。
つまり、ワークの漏れ孔が同じでも、その試験条件(主に圧力および温度)の変動により、発生する漏れ量が異なってしてしまうのです。たとえば、図3のように、孔の大きさが同じワークでも、加わる圧力の違いによって、AとBのように発生する漏れ量が異なってしまいます。漏れ孔自体の大きさが同じでも、試験条件(温度・気圧・テスト圧)の変動によって漏れ量が変わってしまうのです。
外部環境の変動による漏れ量への影響は、表1にまとめたように5~20%と予想されます。
試験条件を定めずに漏れ量で漏れ判定をすると、試験条件(圧力・温度など)の変動によって検査の水準も変化してしまうことになります。これを解決するために、試験条件の各パラメータ(テスト圧、大気圧、温度など)を測定して測定環境を整えるのは、多大なコストと時間を要するため現実的な方法ではありません。そこで、環境を整えるのではなく、規定した条件(標準状態)で値付けされた漏れ素子(FFM-100)をもとに漏れ量を補正するオートキャリブレーション機能を開発しました。図4のように、試験条件が変動してもオートキャリブレーションにより、同じ条件で漏れ量を評価することができます。
オートキャリブレーションは、ワークの孔(欠陥)と同様の挙動が期待できる漏れ素子の実測した値(差圧)を用いて補正する機能です。漏れ素子は、標準状態を温度23℃、気圧101.3kPaとして漏れる量を値付けされた素子です。従来行ってきた「実際に流れる漏れ量」の測定で判別するのではなく、「標準状態で流れる漏れ量」に換算した漏れ量で判別することができます。これまでにも、漏れ素子を併用した測定は行われてきましたが、初めに一度行えば変化しない「固定の定数」として扱い、環境による漏れの変動を測定の誤差としました。これを、漏れ素子により環境変動の値を取り直すという考え方で漏れ量を測る方法に切換え、従来よりも環境の変動に追従することが可能となりました。